*           *            *


「あ」
コンビニに入った鬱井は、ふと立ち止まった。

(シャツ着てなかった・・・・・)

動揺しすぎた。現実から逃げ過ぎるのも考えものである。
「いらっしゃいませー」
一点の曇りも無い店員の声。鬱井は覚悟を決めてこのまま買い物を済ませることにした。


(近所のコンビニで、んな・・・・・下手するとリアル通報・・・)

しかし、上半身裸くらいで通報はされまい。ここは開き直るしかない。
普通にしていれば大丈夫、普通にしていれば・・・・
足早に弁当コーナーに向かい、お気に入りのエビフライ入り弁当に手を伸ばす。


「あ、うっさん」
「!!!」


鬱井は目の前のエビフライを見つめたまま固まった。
否、それはエビフライではなかった。



『マガフライ定食 550円』


「うっさんそんな格好で何してるの?」
参号丸ことマガフライは、ラップ越しに鬱井に語りかけてきた。

(そんな・・・・マガフライ・・・・?なぜこんな所に・・・・)

            ヽ(  
          __ノ从ハ、.,、、.,、、..,_      /i
          / (´△`ヾ、 .:、:,,.: ::`゙:.:゙:`''':,'.´-‐i
        /くくくくノノノノノCCCC○○ /|
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/   /
   /        ●       /  / 
  | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  / 
  |____________|/

「うっさーん」

マガフライの声は、最早鬱井には届かなかった。

(まずい・・・・2chのし過ぎか・・・・?いや、今までこんなことは一度も無かった。
・・・・俺のどこかでエラーが起きている・・・・・かつて無いような・・・・
大丈夫だと思ってたけど、やはりイノセンス堂でウイルスに感染したのかも・・・・
あいつウイルスまで作ってやがったのか?新種ならウイルスバスターも反応しない。
対応されるのか?いつ?もし、ターゲットが俺だけだったとしたら・・・・
・・・・・・・・・
畜生、PCに手なんて突っ込むんじゃなかった。)

鬱井自身がウイルスに感染したことなど今までに一度も無い。
となると、やはりあのことが原因としか思えない。それともイノセンス(?)に手を掴まれた時だろうか。
どうでもいい。とにかく早く駆除しなければ。ウイルスの性質は良く解らないが、命に関わる可能性もある。

「おーいおーいうっさーん?聞いてる?」
「マガフライ、ちょっと相談したいんだけど、俺さっき・・・・」

しまった。
ここはコンビニ、しかも、鬱井は上半身全裸である。

鬱井は慌てて辺りを見回した。
店の反対側で学生らしき一団が騒いでいる。店員は特にこっちを意識してる様子ではない。
セーフか・・・とも思ったが、やはり監視カメラに上半身全裸で独り言をつぶやく自分の姿を捉えられてしまったショックは隠しきれない。

(とにかく外で話そう・・・・)

マガフライ定食をカゴに放り込み、ペットボトル入りのお茶を買ってレジに直行。
彼にどの程度PCの知識があるか鬱井は知らなかった、が、
このまま夜が明けてPCショップやカスタマーサポートセンターの営業時間が始まるまで待つなどとは、今の鬱井にはとてもできない。
PCがまともに動くかどうかもわからない今、彼に相談してみるより他に選択肢は無かった。

「550円が一点、105円が一点・・・・こちら暖めますか?」
「はい」

急いでズボンのポケットから財布を取り出す。
ん・・・・?
・・・何か、何か大切なことを忘れている気が。
いや、財布はある。お金も入ってる。問題な・・・・・

   .| | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
   .| | [][][][][][][] ||   こちら温めますかぁ〜?
   .| | ̄ ̄ ̄ ̄.| ̄ ̄]  __    ┌───────┐
   .\|_□□[][](*゚ー゚) /_// < ゥッサァン !!(´△`;. │
          .(l┴┴lつ─-´  └───────┘
        __|__|_______
         |\ ┌-/[ \ 655] 匚茶]コ  \
         |  \\L  ̄ ̄⊥        \
         |    | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄, ゙ ̄"' 、 ̄|
         |    |           .;゙    .l  | あ、はい。
               |           l U   ;゙  |
                      l  / /    ・・・ん・・・・?
                       しU" ・・・何か、何か大切なことを忘れている気が。



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「あっ!!」


パァン

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  │.   ┃       .ヘ⌒⌒ ⌒ へ、.     ┃    :│
  │.   ┃     ( イ ""  ⌒ ) ヾヾ  ┃ | ̄| │
  │.   ┃  ( (  ミ ⌒ ,,  ヽ )ヽ)┃ |_| │     、、
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店員が慌てた様子で電子レンジの扉を開けると、そこには赤黒い血液がべったりはりついていた。


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